やっとこさ本腰入れてやり始めましたよ、更新を!!
色々な何かから逃げてはいますが気にしない。
愉快な織田一家、夜祭に行くの巻。丹羽長秀視点です。
つづきは下からどうぞ。
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どこからか、祭囃子が聞こえる。
そういえば今日は近所で夜祭があったかと、長秀は一人納得した。
傍らには山積みの書類。
内政嫌いの信長に押し付けられた代物である。
文句の一つでも言ってやりたいところだが、肝心の本人がいないのでは仕方ない。
ふと目を上げると、つまらなさそうに弓の弦を弾いている蘭丸、そして困ったような顔をして傍に佇む濃姫の姿があった。
「蘭丸君・・・ごめんなさいね。約束してたのに・・・」
「いえ、大丈夫です濃姫様!!信長様だってお忙しいんですし!」
どうやら三人で今日の夜祭に行く約束をしていたらしい。
しかし、勝家の任された城攻めが上手く進まず、3日ほど前から信長も現地に赴いていた。
「・・・殿ならすぐに帰ってきますよ、蘭丸。」
「長秀・・・なんでわかるんだよ?」
「殿は昔からできない約束はしませんからねぇ。それに・・・」
「?」
「聞こえませんか?」
祭囃子に混じって、馬の蹄の音、鎧のぶつかる金属音。
「殿のお帰りだーっ!信長様が帰られたぞーっ!!」
物見の声に、弾かれたように蘭丸が顔をあげた。
「長秀、お前案外凄いな!見直したぞ!!」
そういい残して外へと駆け出していった。
「案外って・・・私は一体どう思われていたのやら・・・」
そう呟く長秀に、濃姫が声を掛けた。
「長秀・・・見えていたんでしょう?」
そう言って笑いながら指差した先には、開け放した窓。
丁度蘭丸の死角に位置するこの窓から、城に向かってくる一団の姿を見たのであった。
「・・・気づいておられましたか」
「ふふ、蘭丸君には内緒にしておくわね」
そう笑う濃姫の背後の襖が突然開いた。
「濃!!」
「・・・っ!?か、上総介様!!」
「殿!?」
突然の主君の登場に慌てて平伏する二人。その様子を気に留めるでもなく、信長は言い放った。
「・・・行くぞ」
「・・・え?」
「丸が待ちかねておる。さっさとせんか!」
そのまますぐにでも行きかねない信長に、長秀が声を掛けた。
「と、殿!お待ちください!!」
「何だ」
「祭りにその格好で行くおつもりですか!?」
馬から下りてすぐここへきたらしく、甲冑に剣と鉄砲、その上埃と血まみれである。
「・・・むぅ」
「湯殿の用意もできておりましょう。浴衣をお持ちしますからお着替えなされませ。その頃には濃姫様の
支度も整うでしょうし」
「・・・・・是非もないわ」
そういい残すと踵を返して去っていった。おそらく湯を浴びに行ったのだろう。
「長秀、いつもごめんなさいね」
「いえ。楽しんで行ってらして下さい」
「・・・ありがとう」
濃姫と入れ違いに入ってきたのは今回の城攻めの責任者である勝家と、信長に随行した光秀、久秀の三人であった。
「これはこれは・・・えらくお疲れで・・・」
「け・・・今朝から走り通しでな・・・全く、相変わらず無茶をなさる・・・」
「フフ、星が見えますよ・・・」
「・・・・・」
「久秀殿?」
「・・・み、水をもらえるかね・・・」
「・・・どうぞ」
水を飲みながら、勝家が状況を話し始めた。
「久秀殿が火薬庫を爆破してな。その勢いで突破したんだが」
「まぁ、あの様子では信長公が単騎で突入しかねませんでしたからねぇ・・・」
「・・・まさか火薬庫の中で爆破をさせられるとは思わなかったがね・・・」
そういう三人に、実に言いにくそうに長秀が切り出した。
「お疲れのところ申し訳ないんですが、仕事です。書類・・・手伝っていただけますか?」
「なっ!?まだ終わっとらんのか!」
「これでも頑張ったんですがね・・・一益殿、降りてきてください。いるのは分かってるんですよ」
そう天井に向けて声をかけると、
「・・・ばれたか」
と、忍び装束の一益が降りてきた。
「全員でやれば少しは早く終わります。頑張りましょう?」
そういって山積みの書類の分配を始めた。
遠くで聞こえる祭囃子。どうやら今年も、夜店は拝めそうにない。
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結局苦労するのは家臣です。
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